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横浜地方裁判所 昭和51年(ワ)1267号 判決

原告 木野興産株式会社

右代表者代表取締役 木野正雄

右訴訟代理人弁護士 杉山保三

同 中村均

被告 有限会社吉喜商会

右代表者代表取締役 佐藤弘子

被告 内田秋男

主文

被告らは、原告に対し、連帯して、金三七一万九〇〇〇円及びこれに対する昭和五一年一月一六日から完済まで年一八・二五パーセントの割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告の求めた裁判

主文同旨の判決及び仮執行の宣言

第二原告主張の請求原因

(一)  原告は、油類製品等の販売を業とする株式会社であるが、昭和五〇年八月一日、被告会社との間で、原告が被告会社に対し、油類製品を、代金は毎月末日に締切りこれをその四五日後に支払い、代金債務についての遅延損害金の利率を日歩五銭とするとの約定で、継続的に供給する旨の契約を締結した。

(二)  被告内田は、右同日、原告に対し、被告会社が原告に対し、前項の継続的販売契約により負担する債務を、被告会社と連帯して保証する旨を約した。

(三)  原告は、昭和五〇年一一月一日から同年同月末日までの間に、被告会社に対し、右(二)の契約により、軽油三万リットル及びガソリン二万八〇〇〇リットルを販売し、その代金は合計金三七一万九〇〇〇円となった。

よって、原告は、被告らに対し、連帯して、被告会社においては右(三)の売掛代金債務金三七一万九〇〇〇円及びこれに対する右(一)による支払期日の後である昭和五一年一月一六日から完済まで約定以下の年一八・二五パーセントの割合による遅延損害金の、被告内田においては右(二)の連帯保証債務としてこれと同額の金員の各支払いを求める。

第三被告らの欠席及び判決理由

一  被告会社は、民訴法一六二条二項による適式の呼出しを受けたのに、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しないから、同法一四〇条三項により、原告主張の請求原因事実をすべて自白したものとみなされる。

二1  本件記録によれば、被告内田が、昭和五一年八月二八日、同被告の肩書住所地において、民訴法一六二条二項により、直接、本件訴状副本、同年一〇月四日午後一時の本件口頭弁論期日の呼出状及び答弁書催告状の送達を受け、その後、当庁裁判所書記官が、被告内田に対し、同年一〇月一四日午後四時及び同年同月二九日午後四時の二回にわたり、いずれも、同法一七〇条二項により、同被告の肩書住所地をあて所として、横浜港郵便局の郵便法五八条五項による書留郵便(以下、簡易書留郵便という。)に付して、同年一一月一五日午前一〇時の本件口頭弁論期日の呼出状を送達したが、右郵便がいずれも「受取人出局せず保管期間経過のため差出人へ還付」との理由で、同法五二条一項により還付された事実が明らかである。

2  右事実によれば、被告内田がその肩書住所地に住所を有する事実を推認することができ、これが当庁所在地である横浜市の外であることは明らかである。そのような場合、特段の事情のない限り、被告内田が右住所のほか居所、営業所又は事務所を当庁所在地に有すると考えることはできず、本件においては右特段の事情を窺うに足りる何の資料もないから、同被告が本件訴状副本の送達を受けて本訴が当裁判所に係属した同年八月二八日以降は、同被告から民訴法一七〇条一項により当庁の所在地内において送達を受けるべき場所及び送達受取人の届出がなされない限り、同被告に対して送達すべき書類は、同法一七〇条二項によって適法に送達しえたというべきである。そして、その送達の方法としては、簡易書留郵便に付することをもって足りると解され、さらに、同法一七三条により右郵便に付した時に送達があったものとみなされるから、特段の事情のない限り、その後右郵便が還付されても既に発生した送達の効力が失なわれることはないというべきである。本件においては、右1に認定の還付理由に照らせば、これが郵便規則九〇条による還付であると推認することができ、そうすると、郵政省昭和四〇年四月一六日公達第二五号集配郵便局取扱規程一六一条に鑑み、還付は被告内田の責に帰すべき事由によるというべきであるから、右特段の事情があるとは到底いうことができない。

3  民訴法一七〇条二項による送達方法の活用については、賛否両論があって、かりそめにもいたずらにこれを便宜のためにのみ濫用するようなことがあってはならないが、本件のような場合には、更に同法一六二条一項による送達を実施する等の措置を採ることにより原告に時間と費用の点において負担を強いることなく、同法一七〇条二項の送達により同法一四〇条三項の適用を図るのが相当である。

4  以上のとおり、被告内田は、民訴法一七〇条二項により適式の呼出しを受けたのに、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しないから、同法一四〇条三項により、原告主張の請求原因事実をすべて自白したものとみなされる。

三  以上の事実によれば、原告の請求はいずれも正当であるから、これをいずれも認容することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 江田五月)

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